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図−1 調査海域。「しんかい6500」による国際共同潜航調査MODE'94計画で調査した海域です。今回扱っているのはチリ西方のRidge Fluxとして囲まれたエリアです

西太平洋縁辺部は太平洋プレートの沈み込み域であり、海溝・島弧・背弧海盆が発達しており、日仏STARMER計画などにより背弧海盆にも数多くの海底熱水活動が知られています。このように太平洋はその西と東とで極めて対照的な様相を示しているものの、そのいずれの地域にも海底熱水作用が知られており、その比較が生物学をも含めた多くの分野で興味ある課題となっています。
熱水噴出孔の寿命は10年のオーダーで、熱水地帯の寿命は100年のオーダーと推定されています。また、噴出する熱水はほとんど海洋地殻中を循環してきた海水起源と考えられていますが、それが循環するのに要する時間は10年以下と計算されています。これらの事実から、海底熱水活動は他の地質現象に比して非常に短い寿命を持ち、かつ短期間のうちに変動する現象であると言えるでしょう。そのため、ある単位長さの海嶺部からの熱と物質のフラックスを推定するには、これらのゆらぎを取り除く必要があり、長期にわたり(〜1年)それをモニタリングし続ける「海底火山・熱水観測ステーション」を構築する必要があるのです。
1979年に初めてブラックスモーカーを含む高温海底熱水活動が発見されて以来、東太平洋海膨21°Nにおいては10年以上にわたって熱水の組成、温度、その他の観測が繰り返し断続的に行われています。その結果熱水の組成は10年間ではそれほど変化しないことがわかっています。一方、9°Sの海域では1989年と1991年で海底の様子が激変しており、熱水の化学組成が2週間の範囲でも変動するのが観察されました。
海底熱水噴出が海水に与える影響をやや模式的に考えると、高温の熱水は海水中へ硅素、鉄、マンガンを多量に供給することが知られていますが、これらの元素は海水中の植物プランクトンの重要な栄養源であり、通常これらの栄養に欠如している大洋表面において大きな影響を及ぼすことが考えられます。実際メガプルーム(大量の熱水が一気に放出される現象。東太平洋海膨の各地および北フィジー海盆で発見されている)の発生がエルニーニョの引き金になったとする考えもあります。
熱水性生物の分野では新種の発見と記載というこれまでの研究の方向から、新規生物種の代謝生理や機能の解明へと研究の重点が移ってきています。さらに、海底熱水噴出に伴う物質・エネルギーフラックスの研究の1つ

 

 

 

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